第7章 東京遠征
その日の練習が終わったあとも私は昼間に見たあのポメラニアンのことが頭から離れなかった。
あの子は首輪をしていたし、そもそもポメラニアンが野良だなんてことはありえないだろう。
散歩の時に少しだけ離れてしまっただけで、すぐ側には飼い主がいたのかもしれない。
そう思うのだけど、なかなか安心できない自分がいた。
もうこの近くにいる可能性は低いだろうし、そもそも迷子ですらなかったのかもしれない。
たまにリードを外したまま散歩する飼い主も居ないわけではないからだ。
でも、このままでいるのは落ち着かなかったので私は行動を起こすことにした。
もしあの犬を見つけたとき、お腹をすかせていたら可哀想なのでバッグにパンとミルク、調理室から拝借した小皿を詰めこんだ。
それを抱えようとしたところで影山くんに声をかけられた。
「菜月、そろそろ練習始める。ボール出し頼む。」
「ごめん影山くん!今日は他の人に頼んでくれるかな。私ちょっと…」