第1章 出会い
放課後になったと同時に、私は教室を飛び出した。
向かった先は3年生の教室、旭さんのクラス。
さっき練習を見に来ると約束してくれた旭さんを信じていないわけではないけれど、お願いした以上責任がある。
体育館まで一緒に行こうと思っていた。
今思えば、菅原先輩と初めて帰った時、私が先輩のトスをほめた際の苦い表情は、このことが原因だったのだ。
知らなかったとはいえ、余計なことを言ってしまったんだなあと今更ながらに反省していた。
3年生の階に着き、旭さんのクラスを覗けば、私の姿に気付いた旭さんが大げさに肩を縮こまらせた。
「うわ!水沢さん…」
「すいません、お迎えにあがりました…」
「そんなに心配しなくてもちゃんと約束は守るよ。」
旭さんは苦笑し、カバンを背負う。
「じゃあ、行こうか。」
体育館に着くまでの間、旭さんは久しぶりだから緊張する、という内容の言葉をバリエーションを変えながら何度も口にした。
それを見て私は、体は大きいけど、気が小さくてガラスのハートなんだなあと思う。
旭さんのことは、常に気にかけて元気付けていかなければ。