第1章 出会い
次の日の朝、私はある決心を固めていた。
旭さんに直談判しに行こう。
菅原先輩の気持ちを誰か他の人が伝えれば、旭さんにも分かってもらえるんじゃないか。
そう考えた。
何より、このまま何もしないでじっとしているのがたえられなかった。
3年生の教室が並ぶ階へと立ち入るのは初めてだった。
途中で菅原先輩に会ったら何て言おう…と考えていたけれど、それは杞憂に終わった。
偶然、旭さんが教室から出てこちらの方向に歩いてくるところに出くわした。
向こうもすぐ気付いてくれた。
「あれ…君、昨日の」
「こんにちは!あの、ちょっとお話したいことがあるんです。少しだけお時間いいですか?」
旭さんは、困ったように頬をかいたけれど、何も言わずに私についてきてくれた。
近くの空き教室に入る。
そして、旭さんに向き直り、頭を下げた。
「単刀直入に言いますが…お願いします!部に戻ってきてください!!」
「そ、そんな…頭上げてよ。困るよ。」
旭さんの困り果てた声が聞こえるけど、私だって引き下がれない。
「菅原先輩は、旭さんのこと自分のせいだって気にしてます。だから…」
「……君は…」
「あ、申し遅れました。私、水沢菜月です。」
まだ名乗ってすらいなかったことに気付き、遅ればせながら名乗る。
それを受けて、旭さんが口を開いた。
「水沢さんは、スガのことを大事に思ってるんだね。」
「えええ!///私は、そんな…」
いきなり予想外のことを言われて思わず頭を上げてしまった。
「あれ、違った?これもセクハラとかになるのかな…」
怯える旭さんに対して首を横に振る。
そしてまた、頭を下げる。