第1章 出会い
保健室の先生は、今ちょうど会議で出ていたので、保健室には2人きりだった。
大地さんにおろしてもらい、ベッドに腰かける。
「何かすみませんでした…。練習時間奪ってしまって。」
「まあ気にするな。これからは流れ玉、気をつけるんだぞ。」
そう言って笑う大地さんはとても大人に見えて、本当に2歳しか変わらないのかなと思わせる。
「はい。あの…重かったですよね。ほんと、恥ずかしい…」
「いや、別にお世辞でも何でもなく重いとは思わなかったぞ。…ただ…」
「ただ?」
大地さんはいたずらな笑みを浮かべて私に近づき、耳打ちをした。
「すげー柔らかかった」
「…なっ…///」
慌てる私を見て爽やかに笑う先輩。
こんなことを言う人なのかと驚きが隠せない。
「…なんてな。悪い悪い。これじゃあ田中と西谷のこと言えないな。」
お前見てると何だかからかいたくなってさ、と言いながら大地さんはベッドサイドのカーテンをひいた。
「じきに先生も戻ってくるだろうからそこで寝とけ。」
「は、はい…」
「よし、くれぐれも無理して戻ってくることはするなよ。これも部長命令だ。」
「わかりました。」
「じゃあ、俺は戻るわ。」
「あっ…ありがとうございました!」
「おう。」
大地さんが保健室を出て行っても顔の火照りはおさまらなかった。
意外な人にからかわれるとダメージが大きい。
ベッドに体を横たえて、目を閉じた。
先生が戻ってくるまで、少し眠らせてもらおう…。
眠りに落ちるまで、そう時間はかからなかった。