第1章 出会い
練習が始まっても、菅原先輩の表情が優れないような気がしていた。
いつも通り笑ってはいるんだけれど、何だか寂しさがにじみ出ているような…
考え過ぎかな。
考え事をしていた罰だろうか。
次の瞬間、脳天に物凄い衝撃を感じた。
「ふげっ」
「うわっ…悪りー!大丈夫か?!!」
田中先輩の打ち損じたスパイクが見事に私の頭にダイレクトに当たった。
「菜月ちゃん!!大丈夫?! 」
清水先輩がよろけた私を支えて心配そうな声を出してくれる。
「大丈夫、大丈夫です…むしろ目が覚めたっていうか…流れ玉に注意してなかった自分が悪いので……」
頭がぐらぐらするけど、時間が経てば治るだろう。
「念の為、保健室へ行こう。」
「いや、大丈夫です清水先輩!そんなに大したことないんで…」
真剣な表情で私の手を引く清水先輩を、騒ぎに気付き、こちらに駆けつけた大地さんが制した。
「清水、俺が連れて行くから。」
「澤村…」
「いや、大地さん!俺が当てちまったんだし、俺が!」
「田中に任せるのは心配だから却下。」
「な、なんすかそれー!」
大地さんは私の足元に背中を向けてしゃがみ込む。
「ほら、乗れ。」
「いや、そんな…」
「いいから、はやく。部長命令。」
そう言われるともう何も言えない。
みんなの視線が集まる中、私は観念して大地さんの背中に身を預けた。
「澤村が行ってくれるなら安心。」
清水先輩がそう言って微笑むと、田中先輩に追い打ちがかかる。
潔子さぁーん!!という絶叫を背中で聞きながら、私と大地さんは体育館を後にする。