第1章 出会い
「おーい、旭ー!」
「……スガ…。」
「菅原先輩!」
菅原先輩の同級生ということは、3年生だったのか。
妙に納得する。
「あれ、菜月 ?旭と知り合いだったのか?」
「あ、いや、今角でちょっとぶつかってしまって」
「ふーん、そうだったのか。」
菅原先輩は私から旭と呼ばれた先輩に視線を移し、再び口を開く。
「…なあ、旭。そろそろ戻ってきてくれないか。エースのお前がいないと、やっぱりしまらないんだよ。」
「………」
「俺のせいだってのは分かってる。でも、すごい1年が何人も入ってきたんだ!今ならお前ばっかりに負担をかけたりなんかしない。だから…」
「別にスガのせいなんかじゃないよ。エースのくせに決めきれない俺が悪いんだから…。」
どうやら旭さんもバレー部の先輩のようだ。
でもまた込み入った事情があるようで、今は部活に来ていないらしい。
気まずい話題の交わされる場に居合わせてしまった手前、何も声をかけずに立ち去ることも、話に割って入ることもできず、ただ立ち尽くす。
菅原先輩は、旭さんの返事を聞いてからカバンを背負いなおした。
そして私に、行くぞ、と声をかける。
「みんな待ってるから。これだけは覚えていてほしい。」
旭さんにそう言い残し、その場から離れた。
私も旭さんに会釈をし、慌てて菅原先輩の背中を追いかける。
追いついて隣に並んだ後、菅原先輩の横顔を覗くと、いつになく固い表情で。
職員室へ寄るため途中で別れるまでの間、私は先輩に何も話しかけることができなかった。