第7章 東京遠征
研磨くんのいる間にどうしても一度やってみたかった。
私がスマホを操作する様子を、隣の研磨くんは遠慮がちに覗く。
研磨くんのアドバイスのおかげで意識が変わったからか、1回もクリアできなかったその曲をクリアすることができた。
「おおおー…!!!」
「……………」
嬉しくて研磨くんの方を見る。
最初は無表情だったけど、見つめ続けると、彼はほんの少しだけ笑ってくれた。
「……良かったね。」
「うん!ありがとう!!…あ、ねえ。今度は研磨くんがやってるのも見せて!」
「え…」
「いいじゃん、だめ?見られてると集中できない?」
「そんなことは……ないけど。」
研磨くんはスマホを操作して曲を選んだ。
どうやら私が苦手だと言った曲をお手本として見せてくれるらしい。
曲が始まると、研磨くんの指使いにこれまた顎が外れそうになる。
最大難度の曲なのだからある意味当然なのだけど、指の動きが半端ない。
前の合宿の時や今回の研磨くんの様子を見る限りでは、あまり機敏な感じではなさそうなのに。
ゲームをプレイする彼の指先は、普段のイメージを覆すくらい凄いものだった。