第7章 東京遠征
「もしかして、彼は水沢さんの王子様なのかもしれないね?前世で恋人同士だったとか…」
「いやいやいやいや…」
慌てて否定するも、影山くんについた火は消すことができそうもなかった。
「あの人にも絶対負けねえ……!!」
燃え盛る炎を背中に携えたまま、影山くんは練習に戻っていった。
私は再び、考える。
東京に来るのはこれが初めてのはずの私が、彼に会ったことがあるなんて可能性はかなり低いものだろう。
だとすると……
先生の言う通り、王子様?
思わず、また盗み見てしまった梟谷のコート。
ふいに、そこに立つ赤葦さんと目が合った。
驚いて、つい大袈裟に視線をそらしてしまった。
……失礼なことしちゃったな。
そう反省したあとは、雑念を振り払い、自分の仕事を片付けることに集中することに決めた。