第1章 出会い
影山くんにそんなことを言われるなんて思わなくて、驚いた。
期待に満ちた表情がいつもの彼とは思えなくて、やっぱり皆色んな顔があるんだなあと思う。
「うん!今度作ってくるね。」
「…サンキュ。」
「えー!なになにクッキー?!影山ずるいぞ、俺も俺も!俺にもちょうだい菜月!」
嬉しそうに笑った影山くんの表情が曇るまで、1秒とかからなかった。
購買に向かおうとしていたらしい日向くんが私達の話を途中から聞いていたようだ。
「このっ…日向!!俺が先に頼んだんだぞ!」
「別にいーだろ順番なんて!」
走って逃げる日向くんを追いかけて影山くんは行ってしまった。
…教科書たちを放り出したまま。
私はそれを拾い集めて、3組の生徒に影山くんの席を尋ね、机の上に置いてから教室へ戻った。
今度はすごい枚数のクッキーを焼かなきゃいけないかな?
そんなことを考えながら。