第1章 出会い
「おい、大丈夫か?!」
その声が私にかけられたものだと気付いた瞬間、激しく肩を揺さぶられていた。
焦った表情で私を揺さぶっていたのは影山くんだった。
移動教室からの帰りのようで教科書などを持っていたけれど、今はすべてほっぽり出してその手を私の肩にかけている。
「ど、どうしたの影山くんー」
「どうしたのかはこっちが聞きてえ!今月島にゆすられてただろ?!弱みでも握られてんのか!」
「ええ?!」
な、なんて人聞きの悪いことをこんなところで…!
「そんなことないよー!昨日借りたお金返してただけー!」
「何かもうひとつ渡してただろーが!!」
いやに真剣な影山くんに驚きながらも、ありのままを答える。
こんなに真正面から見つめられたのは、初めてかもしれない。
「あれはクッキーだよ。昨日お金借りたお礼に。買ったものだと気を遣わせると思って手作りのものにしてみたの。」
「クッキー?!」
そこまで聞いたところで、影山くんの手が私から離れる。
「変な勘違いして悪かった…」
「あ、ううん。でも心配してくれてありがとう。」
影山くんは、顔を赤らめて俯いた。
「その…」
「ん?」
「クッキー…俺も食いたい。」
「へ…」
「俺にもクッキー作ってくれ!」