第6章 再起
「この際だから言っておくけど、男は皆そんなもんだよ。好きな子は身も心も自分のものにしたいって思っちゃうものだと思う。」
じゃあ、先輩もそう思ってるってことですか。
頭の中に浮かんだこの言葉は、声にはならなかった。
「だからさ…。まだ付き合ってもないのにキスした俺が言えることじゃないけど、気をつけてほしいんだ。」
「………は、はい…」
「月島にも抱きしめられたことあるみたいだけど、それ以上のことはされてないよな?!」
「されて、ないです…」
いつになく必死な様子の菅原先輩に気圧される。
私の返答を聞いて、先輩は本当にほっとしたというように息を吐いた。
そして優しい表情を作って続ける。
「…はやく、あいつらに“俺の彼女に触るなよ”って言えるようになりたいな。」
「え……」
「…あ、ごめんごめん。返事急かしてるわけじやないんだ。本音が出ちゃっただけ。菜月のこと、誰にも取られたくないからさ。」
私は恥ずかしくて俯いた。
こういう時、なんて言葉を返せばいいのか未だにわからない。
「ほら、部活行くぞー。」
そう言って歩き出す先輩のことを、私は部室に着くまでまともに見ることはできなかった。