第6章 再起
取材班の人達が退散したあとも練習は予定時刻まで続けられ、その日は終了となった。
片付けをしていると、後ろから影山くんに声をかけられた。
「おい。」
「は、はい!!!」
「さっき…なんて言おうとしてたんだよ。」
影山くんの好きなところについて聞かれた件だとすぐに分かった。
さっき思い浮かんだことをそのまま影山くんに伝える。
本当のことだし、別にいいよね。
すると、影山くんは顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
「そんだけ挙がるのに何でまだ俺のこと好きだって言わねえんだよお前は…」
「え?」
「なんでもねえよ!!!」
そのまま影山くんは私に背を向けて行ってしまう。
その背中を見つめていると、今度は別の方向から声をかけられた。
「菜月!菜月!」
菅原先輩が倉庫の方から手招きしていた。
小走りで先輩のもとへと向かう。
「どうしたんですか?」
「ん、ごめん。ちょっといい?」
そう言って先輩は私の両手を優しく包んだ。
「俺も嫉妬しちゃってさ。ごめん。ちょっとの間でいいからこうさせて。」
触れられたと同時に心臓が跳ねた。
やっぱり、先輩の直球は心臓に悪い。
ちょっとの間と言いながら、菅原先輩は結構長い間私の手を離さなかった。
「ごめんな、一度触ったら離したくなくなっちゃって。」
頬の熱が上がり続けて止まらない。
結局、他の誰かが倉庫に入ってきて慌てて手を離すまで、二人きりの時間は続いたのだった。