第1章 出会い
影山くんの練習に付き合ったあと、朝練を終え、午前中の授業をこなした。
その間も朝聞いた影山くんの話が頭から離れなかった。
あんなに辛そうに話していたのに、それでもバレーはやめたくなくて高校でも続けてるんだ。
本当にバレー好きなんだなあ…
お昼休みに入るチャイムの音を聞いたところで、私は反射的に席を立った。
バッグから財布と小さな包みを取り出し、4組の教室へと向かう。
まだお昼になったばかりだから、いるよね…?
例によって朝練の際には大して話せなかったため、昨日借りたお金を月島くんに返しにいったのだ。
「月島くーん!」
4組の出入口から月島くんの名前を呼ぶ。
声に気づき、自分の席でゆっくりと顔を上げた月島くんと目が合う。
ちょっと来て、と手で合図した。
「……何?」
「あのこれ、昨日のお金!ありがとう!」
「あー、はいはい。」
月島くんはそれだけ受け取って戻ろうとしてしまう。
「ちょ、ちょっと待って待って!」
「まだなんかあるの?」
「これ!昨日のお礼!」
私は一緒に持ってきた包みを差し出した。
「…?何、これ」
「クッキー。昨日焼いたんだ。何かお礼できないかなーと思って。」
「へー。何かいかにも女子って感じのお礼の仕方だね。」
「そ、そう?」
「……別に悪い意味じゃないから。」
私達が話していることに気付いた山口くんが、おーいツッキー! 水沢さーん!といって自分の席からこちらへやってくる。
「なになに?ツッキー何かもらったの?」
「昨日、月島くんに助けてもらったからお礼にクッキー焼いてきたんだ。」
「へー!良かったじゃんツッキー、甘いもの好きだし!」
「…うるさい山口」