第1章 出会い
「影山くん…」
影山くんが私の声に顔を上げる。
「そんなに辛い思いした時のこと、話してくれてありがとう…」
「…?!お、お前…泣いてんのか?!」
「な、泣いてないよ!バレーもやったことない私にその時の気持ちとかセッターとしての怖さ、理解できるとか言われたら嫌でしょ?」
「……」
「ごめんね、嫌なこと思い出させて。」
「…別に。俺が菜月…に話したかっただけだし。 」
ふいに呼ばれた私の名前。
それはまだまだぎこちないものだったけど、彼が私に歩み寄ろうとしてくれていることが痛いほど伝わった。
「私、着替えてくるね!早く練習はじめよう!!」
「お、おう。頼む。」
私は影山くんに背を向けて女子の更衣室へと走る。
私に伝染した影山くんの痛みは、涙となってじんわり滲みだす。
影山くんに指摘された通り、私は少し泣いていた。
彼に気付かれないように軽く拭って、私は先を急いだ。