第6章 再起
「こんにちは。」
「こ、こんにちは…」
アイドルの握手会なんて行ったことはないけれど、実際に行ったらこんな感じなんだろうか。
頭が真っ白になる。
それでも、こんなチャンスは二度とないのだから言いたいことを言わなければ。
言いたいことをコンパクトに、手短に…
「あ、あの…」
「?」
「すごく、好きです!!!」
目の前の彼は私の必死さに一瞬驚いたようだったけど、すぐに笑顔を返してくれた。
「出る作品毎に全然印象が違くて…いつもすごいなって思って見てます…」
「ありがとう。すごく嬉しいです。これからも頑張ります。応援していてね。」
そう言って両手が差し出された。
私から握るのなんてためらわれて、震えた両手がお腹の前で止まってしまう。
それを見た彼は、優しく笑ってぎゅっと両手を包み込んでくれた。
私は、日向くんのようにショートしてしまった。
何これ、幸せ……
手が離れたところで、練習再開の号令がかかる。
ようやく正気に戻ると、黒いオーラを纏った影山くんがこちらを見て怖い笑顔を浮かべていた。
「お前、後で覚悟しとけよ…」
「ひい!!」
睨まれるよりよっぽど怖かった。
「影山じゃないけど、何か俺も嫉妬しちゃうな。」
私の横を通り過ぎるときに菅原先輩もそんな台詞を言い残していく。
恥ずかしさに、私は俯いた。