第6章 再起
「………」
「菜月?どうかした?」
私の異変に気付いたのか、菅原先輩が声をかけてくるけど、視線を先輩に向けるのが精一杯で声が出なかった。
今回のゲストリポーターは、私の好きな俳優だった。
最近の若手俳優の中では、ずば抜けて演技派の彼は、若くして多くの賞を受賞するほどの実力派だった。
配役によってその雰囲気をがらりと変える彼に、私はいつも画面越しに感嘆のため息を漏らすほどだ。
それに、体つきもいかにも女性が好みそうな細マッチョ系で、キリッとした顔つきのイケメンなので、とても人気の俳優なのだ。
芸能人なんて、裏では物凄く性格が悪かったりするものだと周りではよく聞くので、そんなものかなと思っていた。
でも、今まさに視界に入る距離にいる彼からはそんな感じを全く受けない。
腰が低く、周りのスタッフに気を遣って笑顔を振りまく彼は、とても性格が悪そうには見えなかった。
むしろ、一般人の感覚に近い感じを受ける。
「もしかして菜月、あの人のファン…とか?」
菅原先輩の言葉に、私は小刻みに頷いた。
まさか、こんなところで会えるなんて。
嬉しいような、恥ずかしいような。
どこか穴にでも入ってそこから眺めていたいような気持ちになってくる。