第6章 再起
月島くんは訝しげに私を見つめてくる。
「名前の読み方はしょっちゅう間違えられるし、結構大変だよ。」
「え、そうなの?」
「もうめんどくさいから、問題なさそうなときはそのまま流したりするときもある。だから結構“ほたる”って呼ばれるのも慣れてたりする。」
確かにいちいち訂正するのは疲れる作業かもしれない。
「でも私は月島くんの名前好きだけどなあ。響きも。」
「蛍光灯の蛍だよ。どこがいいのさ。」
「いやー、自分の名前のことそんな風に言わないでよ。蛍雪の功とか、そういう言葉もあるじゃん!」
「……やっぱり君、語彙力ないわけじゃないよね。日向や影山みたいに本当にそういう力がないやつは蛍雪の功なんて言葉出てこないよ。」
「そ、そうかな。あはは…」
月島くんは名前を褒められて照れたのか、部屋の隅を見つめたまま言う。
「でも……ありがと。」
その様子がなんだか可愛くて、私は笑顔になる。
「お兄さんも同じライブに来てたなんてびっくりだったね。」
「ああ…もともとこのグループ好きだったの兄貴だから。別に不思議ではないよ。」
「あ、そうだったんだ。」
ということは、影響を与えられるような良い兄弟関係だったということじゃないんだろうか。
結局、食事中もほとんど会話を交わさないままだった二人のことが私はとても気になっていた。