第6章 再起
「ライブってすごいね…やっぱりわざわざ足を運ぶだけのことはあるんだよね…!感動した…」
ライブ終了後、また月島くんに笑われるかと思ったけど私は素直な感想を彼に伝えた。
「…うん。良かったよね。」
月島くんは細かい感想こそ言わないものの、その雰囲気から充分にライブを楽しんだことが伝わってくる。
お気に入りの曲が歌われて嬉しかったとか、そんなことを話しながら駅まで歩いていると、突然月島くんを呼び止める声が響いた。
「…蛍!」
月島くんと一緒に振り返る。
彼の口から出た、“兄貴”という言葉に、私は驚きを隠せなかった。
月島くんの、お兄さん…?
目の前で爽やかに笑うその人は、月島くんに近付いて話しかけてくる。
「久しぶりだな。お前も今のライブ観てたのか!」
「うん…まあ…。」
月島くんの歯切れが悪いことに私は疑問を感じた。
それに今、久しぶりって…。
「君はもしかして蛍の彼女?いつも蛍がお世話になってます。こいつ、無愛想だけど見捨てないでやってな。」
「え、ええ!いや、お世話になってるのは私の方でして…」
突然話しかけられたので慌ててしまい、彼女の部分を否定するのを忘れてしまった。
「俺、今日は家に行くつもりだったんだ。良かったら皆で一緒にうちで夕飯食わないか?母さんも蛍の彼女連れてったら喜ぶと思うし…」
「…菜月が良ければだけど。」
何故か、月島くんは私が彼女ではないと否定しなかった。
視線で、私にどうするのかと聞いてくる。
「あ…あの、ご迷惑でなければ…」
「迷惑なんてないない!母さん張り切っちゃうって。今連絡しとく。」
そう言ってお兄さんは早速家に連絡をしている。
月島家におじゃますることが決まった瞬間だった。