第1章 出会い
次の日。
新学期早々、いくつかのドジをやらかしてしまったため、今日から気を引き締めようと心に決めた。
持ち物をひとつずつ確認。
注意に注意を重ねてから家を出た。
今日から授業も始まる。
それに私は今から影山くんの自主練にお付き合いだ。
昨日と同じような時間に学校に到着すると、やはり昨日と同じく体育館には既に影山くんの姿があった。
「…よお。」
「おはよう!」
「正直、来ないかと思ってた。」
他に誰もいない体育館に、影山くんの声が響いた。
「え、なんで?」
言葉の意味がわからなくて尋ねれば、彼は、ばつが悪そうに視線を背ける。
「昨日、月島ともめたとき怖がってたろ。」
「あー、男の子の喧嘩をあんなに間近で見ることあんまりなかったからね。怖かったというより驚いたけど…でも気にしてないよ、大丈夫。」
「そ、そうか」
「それより二人の関係のほうが心配になっちゃったよ。」
「………。」
私の言葉に、何かを考えるような表情をしたあと影山くんは口を開いた。
「月島から、俺が王様って呼ばれてたことについて詳しく聞いたか?」
「ううん、私が勝手に勘違いして遮っちゃったからちゃんとは聞いてないよ。」
「勘違い?」
「王様って…キングオブセッターってことだと思っちゃって。影山くんすごく上手だから。」
しばらく無反応が続いたため、気を悪くしたのかと思い、あやまろうとした時、目の前から短い笑い声が聞こえた。
「お前って…おもしろいな。」
「そ、そうかなあ?」
自分が面白いのかどうかは疑問だけど、普段あまり笑わない人の笑顔は素直に嬉しい。
「…中学の最後の試合の時。」
「うん。」
「3年間一緒にやってきたやつらに見放されたんだ。」