第1章 出会い
「ちょ、ちょっと待てちょっと待て!ちょっと落ち着こう!ほんとにカバンの中にはないの?一回確認してみようよ。」
菅原先輩に言われて正気を取り戻し、カバンの中身を確認することに。
「………あ。」
「………あったんだろ?」
「…………」
菅原先輩の指摘通り、カバンの中に定期は入っていた。
置きっぱなしだと思ったことがそもそも勘違いだったのだ。
申し訳なさすぎて答えられないでいると、菅原先輩に頭を軽く小突かれて笑われた。
「ほんっとそそっかしいんだなー 菜月って。 」
「ごごごごごごめんなさ…」
「もう謝らなくていいって。楽しかったから!」
そう言いながら、まだ笑いを抑えきれない様子の菅原先輩。
「とにかく見つかってよかったよ。さ、気を取り直して帰るべー」
「はい…」
怒っても良さそうなところなのに笑って流してもらえた。
やっぱり菅原先輩は寛容な人だ…と改めて思いながら教室を後にする。
階段を降りるとき、
「暗いから足元、気をつけな。」
そう言って自然に私の手を取る菅原先輩に本日何度目かの勘違いをしそうになったのは、私だけの秘密……。