第6章 再起
僕も大人になるまでの経験でそういうふうに思うようになったからまだ高校生の君にすぐ理解しろというのは難しいかもしれない。
でも、人生において無駄なことは何一つないと思うんだ。
どんなに辛いことでも、時間が経てばそれが自分の血肉になってるんだと実感できる時が来る。
恋もそうだよ。
無駄な恋なんてひとつもない。
運命に出会うまでに、必ず必要な恋なんだ。
だから水沢さんのお友達にも、今回の恋は運命に出会うまでの過程で必要なものだったんだと、僕は思うよ。
そこまで話したあと、武田先生はハッとしたように両手を顔の前でふる。
「ご、ごめん!つい夢中になってペラペラと…つまらない大人の戯言だと思ってくれていいから!」
そう焦る武田先生を見て、つい笑ってしまった。
「だいたい、まだ独身の僕に言われても説得力ないよね…」
「そ、そんなことないです!なんかうまく言えないですけど…創作の中のことだと思ってた運命ってものが、先生のお友達の話で身近に感じられましたし!」
「そう?なら良かった…」
あからさまにホッとした感じの武田先生を見て、何だか心がほっこりした。
「…だから、水沢さんが気に病むことはないと思うよ。多感な君たちは、すれ違いも大人より多いと思うしね。」
「はい…!」
ありがとうございます、とお礼を言おうとしたところで、また武田先生が笑顔で口を開いた。
「ひょっとしたら水沢さんの“運命”にも、もう出会ってるのかもしれないね。」