第6章 再起
そう言って武田先生が語り始めたのは、学生時代の友人の女性の話だった。
その人は、昔から漫画やアニメが大好きで、現実の恋愛には見向きもしない人だった。
一生一人でやっていくからきちんとした仕事に就く。
それが口癖だったそうだ。
武田先生と同じく教師への道を選んだその人は、最初の赴任先で運命の出会いを迎えることになる。
同時期に配属になった先生に一目惚れをしてしまったというのだ。
相手の人を見た時、雷が落ちるような感覚、というのを感じたそうだ。
「今まであれだけ現実の男性には興味がないと言っていた彼女が一目惚れだなんて僕も最初は信じられなかったよ。」
そう言って武田先生は笑う。
「だけどね、彼に出会ってからのあの子は目の輝きが全く違うんだ。これが本来の彼女だったのかもしれない。僕はそう思った。」
「そう、なんですか…」
「みんながみんな、彼女みたいに劇的な運命の出会いを迎えられるわけじゃないと思うんだ。実際、後から考えれば…くらいの人が圧倒的に多いと思う。」
武田先生は、目を輝かせながら続けた。
「でもね。運命は絶対にあるよ。自分が感じ取れるか取れないかだけの違いだ。」