第6章 再起
言葉をなくした。
大地さんが自分のことをそんな風に思っていたなんて。
確かに今になって考えてみれば、他の人と比べてその頻度は少ないけれど、思わせぶりなことは言われていたような気がする。
「うちのやつら、皆菜月のこと気に入ってるだろ?俺までお前のこと好きだとか言い出したら収集付かなくなると思って今まで我慢してたんだけどさ。」
大地さんの頬がほんのり赤くなっている。
ああ、これは本当のことなんだ。
「俺、菜月のことが好きだよ。…最後まで黙ってられなくてごめんな。」
大地さんは、自分の気持ちを殺して周りや他人のことを優先してしまうタイプだ。
IH予選で敗北したあと、一時は早く部を明け渡したほうが私達のためだと思い、引退を考えていたらしい。
そんな彼だから、恋においてもそのスタンスは変わらなかったのかもしれない。
そう考えると、それでも尚、こうして気持ちを伝えてきてくれた大地さんの真剣さに気付き、胸が苦しくなった。
自分の好きな人が、自分と他の人をくっつけようとしているなんてさぞ辛いシチュエーションだったことだろう。
知らなかったとはいえ、私は友人にも大地さんにもひどいことをしてしまった。