第6章 再起
大地さんに連れてこられたのは、もう誰もいない大地さんのクラスだった。
この教室には初めて入る。
「悪いな、誰もいないところで話したかったから。」
「あ、いえ…。」
大地さんはそう言って教室の扉を両方とも閉めた。
その後、私の方を振り返ってから再び口を開く。
「 …あのさ。全部俺の勘違いだったら恥ずかしいやつと思って笑ってくれていいんだけど、もしかしてあの子…。」
察しのいい大地さんには気付かれてしまっているのかもしれない。
私の体からは一気に冷や汗が吹き出した。
「この前、部室で好きなタイプとか聞いてたのもあの子と関係あるのか? 」
「…………」
どうしよう。
私が今ここで勝手に彼女の気持ちを大地さんに伝えるわけにはいかない。
かといって、黙っていれば肯定しているようなものだし、違うと嘘をつくわけにもいかない。
頭の中でそんな考えがぐるぐる巡って結局言葉は何一つ出てこなかった。
大地さんは、固まった私から言葉を引き出すのは無理だと考えたのか、更に言葉を続ける。
「…俺さ。この前、好みのタイプは守ってやりたくなるやつって言っただろ。」
「…はい。」
「本当はこんなこと言うつもりはなかったんだけど…」
大地さんは一旦言葉を切って、俯いていた私に顔を上げるように促す。
それに従って顔を上げると、真剣な表情の大地さんがいた。
「俺が一番世話やきたくて、守ってやりたいやつは…菜月だよ。」