第6章 再起
掃除が終わるまでに、何とか彼女を紹介できないだろうか。
そう思っていたけど、なかなかチャンスがなく、もう解散の時間が近付いていた。
何とかしなきゃ。
そう思い、クラスメイトの人と話す大地さんの元へ足早に向かおうとしたときだった。
滑りやすいプールの底で足を滑らせた。
転ぶ………!
そう思うよりも速く、腕が思い切り引っ張られ、私は体勢を立て直す。
大地さんが助けてくれた。
彼の体がストッパーになって、支えられている。
傍から見たら、抱きしめられている形だった。
実際、私の腕をひいた方と反対の腕は、私の背中に回っていた。
「はあ…。良かった。大丈夫か?」
「は、はい…」
「菜月は本当に危なっかしいな。気をつけろよ?」
そう言って大地さんは私の頭に軽く手を置いた。
落ちついたところでハッと気付く。
とんでもないところを見られてしまったんじゃないか。
彼女の方を振り向くも、もうその背中は遠ざかっていて、プールを出て行こうとしているところだった。
「あっ、待って…!」
「おい走るなって。また転ぶぞ。」
追いかけようとしたけど、大地さんに手首を掴まれて止められてしまう。
「あの子、どうかしたのか?」
「あ…その…。」
黙ってしまった私を見て大地さんは軽くため息をついてから言う。
「もう掃除も終わるし、部活に行く前にちょっといいか?」