第6章 再起
及川さんと部屋を出たのはいいものの、肝心の自分の部屋は分からないままなのだった。
もういっそのことドリンクバーのところで誰かが飲み物を取りに来るのを待つしかないのかもしれない。
よく考えたらさっきも、無闇に部屋を開けたりしないで、そうすれば良かったのだ。
「で、烏野の連中はどこの部屋なの?」
そう聞かれたけど、分からないので私はそのまま及川さんに説明した。
「ふーん…じゃあ、誰かと遭遇するまで俺と一緒にいよっか。」
その言葉と共に壁に追い詰められ、顎を持ち上げられた。
「さっきからさ、顔真っ赤にしちゃってどうしたの?」
及川さんの綺麗な顔が間近に近付き、私は焦った。
「え?!真っ赤…?」
そういえばさっきから頭はぐらぐらするし頬も熱い。
どうしたんだろう…
「もしかして、俺に惚れちゃった?」
そう言ってにこりと笑う及川さんから逃れようとするけど、体に力が入らない。
「ねえ、キスしてみようか…」
断る隙も与えず、唇を奪われそうになったところで私達の前に立つ人の気配に気付いた。