第6章 再起
「あっ!及川てめえ割込送信しやがって!!」
「いいじゃん、レディーファーストだよ。はやく菜月ちゃんの歌聴きたいじゃない。」
まさか、ここでも歌わされる羽目になるとは。
でも、1曲歌って喉は慣れてきていたのでさっきより心持ちはマシだった。
及川さんが選曲した曲を一生懸命歌った。
これだけ歌い終わったら勘弁してもらおう、そう思って。
曲が終わると、及川さんはしばらく私のことをしげしげと眺めていた。
そして口を開く。
「随分可愛い声で歌うんだね。」
「えっ…」
「何かますます気に入っちゃったなあ。」
「あ、あの、1曲お付き合いしましたし私はそろそろ…」
「えー、まだいいじゃん。もっと色々聴きたいし。」
そう言って及川さんは私の肩を抱いて自分の方に引き寄せてくる。
思わず、及川さんに岩ちゃんと呼ばれている人に助けを求める視線を送ってしまった。
それに気付いたのか、岩ちゃんさんが助け舟を出してくれた。
「及川、お前自分で引き込んだんだから責任持って烏野の部屋にマネージャー返してこいよ。」
「えー、やだ☆」
「ああ…!?また飛び蹴りくらいてえのか…?」
「わっ…分かった分かった!今送ってくるって。」
岩ちゃんさんのおかげで、私は無事に部屋に戻れそうだ。
部屋を出る直前、彼に向かって軽くお辞儀をすると、真顔で会釈してくれた。
口は悪いけど、とても良い人そうだと感じた。