第1章 出会い
ほぼ無一文なことに気付いたお昼に、それでも定期があれば家には帰れる。
そう思ったことを思い出したのだ。
それなのに置いてくるとか…本当に今日は散々だ。
「私、とってきます!今日はもうほんとにここで!ありがとうございました。お疲れ様です!」
菅原先輩に頭を下げて踵を返そうとするも肩に置かれた手にそれを阻まれた。
「こんな真っ暗な中、一人で帰すわけにいかないよ。幸いすぐ戻れる距離だし、俺も付き合うって。」
「菅原先輩…」
「だいたいさ、もう校舎も真っ暗だと思うよ。教室まで一人で行ける?」
「うっ……怖いです。無理です。」
「よしよし。素直ないい子だな。じゃー行くべ!」
昨日に引き続き、優しく頭を撫でられた。
だめだめ、勘違いなんかしちゃ。
きっと菅原先輩はみんなに等しく優しいに決まっている。
私だけが特別なわけがない。
そう自分に言い聞かせる。