第6章 再起
「菜月!お前1番な!」
「ええ!?い、いや、私は今から皆の飲み物を…」
「そんなの各自でやればいいんだよ!」
「嫌ですよ1番なんて恥ずかしいー…」
「そこはレディーファーストだ!」
「レディーファーストってそういうときに使いませんから!」
そのあとも強引な西谷先輩に説得され、これ以上拒否すると場の空気を悪くしそうだったので私は観念した。
何故か西谷先輩はキーが高めの曲を頼むと推してくる。
意味はわからなかったけど、それも考慮して選ぶことにする。
1曲目なので声出しもできていないし、いつも歌うお気に入りの慣れている曲を選んだ。
機械に送信が済んで、緊張からため息をついていると、今度は西谷先輩に背中を押される。
「何やってんだよ、ほら、あそこ行け!」
「ええ?!」
西谷先輩はお立ち台まで私を誘導する。
「こんな良いステージがあんだ、使わなきゃ損だろ!俺はこの特等席でお前のライブを鑑賞するぜ!」
そう言って、西谷先輩はお立ち台に一番近いソファに腰を下ろした。
そうこうしているうちに、部屋が暗くなり、曲が始まる。
私は諦めてスタンドマイクに手をかけた。