第5章 IH予選
適切な言葉すら思いつかない私に出来ることなんてたかが知れているかもしれないけど、それでも何か役に立つことがあるなら何でもしたかった。
影山くんに力強く頷く。
私の答えを確認してから目の前までやってきた影山くんは、その身を屈めて私の肩に顔を埋めた。
「ちょっと…肩かしてくれ。」
それから間もなく、彼は肩を震わせ始めた。
それを見て、私の心もまたざわめきだす。
いつも強い人の涙には、重みがある。
今、影山くんが必要としているのが誰かのぬくもりで、それがたまたま側にいた私なんだとしても、精一杯温めて癒やしてあげたかった。
それで、ほんの少しでも気持ちが楽になるのなら。
私は影山くんの背に手を回してその背中を擦った。
すると、それに気付いた影山くんにきつく抱きしめられる。
びっくりしたけど、私は彼の背中を擦り続けた。
心に溜まった辛い気持ちを全部溶かしてあげられたらいいのに。
そう願いながら。