第5章 IH予選
敗北が決定し、会場を後にしてから、烏養さんの計らいで皆で食事をすることになった。
食いしん坊の私ですら、とてもじゃないけど今は何かを食べる気になんてなれなかった。
それは皆も同じ様子だったけど、ひとたび箸をつけると、涙を流しながら食事に集中していた。
それを見て、私も少しずつ食べ始める。
今日の試合を思い出しながら。
気付くと、私も泣きそうになっていた。
慌てて、席を立つ。
皆の前では泣いてはいけないような気がしていたので、急いでお手洗いの方まで走ってその場を離れた。
涙を拭って気持ちを落ち着けてから皆のところへ戻ろうとしたとき、こちらにやってくる人の気配を感じたので俯いていた顔を上げた。
やってきたのは影山くんだった。
彼はまだ、涙を流してはいなかった。
なんて声をかけようか悩んでいたら、影山くんが先に声をかけてくれる。
「…なあ、ちょっと頼みごとしてもいいか。」
「う…うん!」