第5章 IH予選
影山くんと入れ替わりで、菅原先輩はベンチに戻ってきた。
烏養さんに次回試合に出た時のアドバイスをされると、とても嬉しそうだった。
「お疲れ様でした。」
私がそう声をかけると、控えメンバーがいるところへ戻る前に、先輩は微笑んで私に拳を突き出してきた。
「サンキュ。皆に届くように最後まで応援頑張ろうな。菜月の声、ちゃんと聞こえてるよ。」
「…はい!!」
私はその言葉が嬉しくて、先輩の拳に自分の拳を合わせた。
試合などに出たことはないから想像でしかないけど、極度の緊張や集中状態にあると応援の声なんて耳に入らないものかと思っていた。
でも、ここから発してる声はちゃんとみんなに届いているんだ。
そう思うと、更に気合を入れて応援しなければという気持ちになってくる。
コートに戻った影山くんは、菅原先輩のプレーを見て何か感じるものがあったらしい。
今までと明らかに様子が違った。
まず、ぎこちない笑顔。
菅原先輩の笑顔を意識したのかもしれないけど、普段無理して笑顔を作ったりしないからだろう。
いかんせん、ぎこちなさすぎて怖い。
それに、日向くんのプレーをほめたりハイタッチをしたり。
一番驚いたのは、月島くんに歩み寄りを見せたことだった。