第5章 IH予選
こちらへと走ってくる影山くんの瞳は輝いていて、もう気落ちした様子は一切見受けられなかった。
はやく試合に出たくて仕方なかったのかもしれない。
良かった。
いつもの影山くんだ…
烏養さんの指示を受けたあと、2番の交代パドルを手にした影山くんは、私の方に視線を向けてきた。
私は、強い意志をたたえたその瞳に向かって力強く頷いた。
影山くんなら大丈夫。
それを伝えたくて。
けど、言葉にしたら何だか陳腐になりそうだったから、視線と頷きに気持ちを乗せる。
それに、勝手だけど影山くんなら、私の今言いたいことをわかってくれるような気がしていた。
そんな私を見て、影山くんも力強く頷きを返してくれた。
そしてそのまま、交代のホイッスルと共にコートへと向かっていった。