第5章 IH予選
影山くんは、呆然とした表情でベンチに戻ってきた。
試合の方ももちろん気になるけど、私は影山くんの様子が気になって仕方なくて、コートと影山くんをしばらく見比べていた。
「大丈夫!一本切ってくべ!」
影山くんのかわりにコートに入った菅原先輩は、烏養さんの指示通り固くなった皆に喝を入れるところから始めていた。
菅原先輩の笑顔に、皆が落ち着いたのがよく分かる。
さすが。
やっぱり菅原先輩の笑顔は皆を救うんだ。
そう思って安心したところでもう一度、影山くんのほうを振り返ると、ばっちり彼と目が合った。
でも、影山くんはすぐに視線をそらしてその目をコートの方に向ける。
何でこっち、見てたのかな。
たまたまかな。
何か言ったほうがいいのかな。
色々考えたけど、結局私が影山くんに言えることなんて何もないので大人しく戦況を見守ることにする。
菅原先輩は、月島くんとのブロックスイッチや、日向くんへのブロックの指示などで連続してポイントを稼いでいった。
誰かが決めるたびに、その決めた人を深く労う。
菅原先輩らしいチームの盛り上げ方と感じた。
月島くんなんかは素直に褒められることに慣れていないのか、少し調子が狂うような感じを見せているけど、ああいうコミュニケーションは絶対大切だ。
烏養さんがセッターは指揮者のようで、指揮する人により音が変わると言っていたことがあったけど、こうして実際にセッターが変わってみるとそれを実感する。
どちらが良いということではないのだけど、コートの雰囲気が明らかに変わった。