第5章 IH予選
「その様子だと、いくところまではいってないみたいだね。良かった。」
「な、なんでそんなこと…」
「それはほら、この前言ったじゃん。俺、君のこと気に入っちゃったから。…そう、名前教えてくれない?」
「え、ええと…水沢です。」
「下の名前は?」
また、にこりと笑顔を向けられて、戸惑いながら私は自分の名前を口にする。
「菜月…です。」
「菜月ちゃんか…。うん、君にぴったりの可愛い名前だね。」
こういうところが、女子人気の高さの要因なのかもしれない。
もともとのルックスの良さが、ああいった言葉の選択を許しているような気がする。
イケメンに自分のことを褒められて悪い気のする女子も、そうはいないだろう。
そこまで言って気が済んだのか、及川さんはようやく影山くんに向き直った。
「俺さ、今日、天才セッターを叩きのめすのを楽しみにして来たから。せいぜい食らいついてよね。」
「…今回も、俺たちが勝ちます。」
「そうこなくっちゃ、面白くないよね。…でもさ、飛雄。」
「…?」
「人ってのは、そんなに短期間で変われないもんだよ。」