第5章 IH予選
次の日。
3回戦の対青葉城西戦。
影山くんは試合前からピリピリした雰囲気を醸し出し、周りの空気を張り詰めさせていた。
意識している同じポジションの元先輩が対戦相手なのだから致し方ないのかもしれないけど、私は何だか心配になってしまった。
アップが始まる直前、皆で連れ立って体育館へ向かう道中。
影山くんに一声かけようとしたところで、後ろから肩を叩かれた。
突然のことに驚いて振り返ると、そこにはにこりと笑顔を浮かべた及川さんがいた。
「久しぶり。練習試合以来だね。」
「あ…どうも、お久しぶりです。」
私は昨日、試合の様子を少し見たので久しぶりという気はしなかったけど、とりあえず合わせて挨拶をしておく。
及川さんは次に、身を屈めて私に耳打ちをしてきた。
「ねえ、あれから飛雄と深い仲になったりしてないよね?」
「ええ?!//な、何を…!」
私が大きな声を出したことで、前を行く皆が振り返り、及川さんに気付いた。
「及川さん…!」
影山くんが、もともと固かった表情を更に固いものにした。
及川さんは相変わらず私に視線を向けたままで、影山くんの方を見ない。