第4章 変化
「有名になったり何者かになんてなれなくてもいいから、自分の家族と平穏に暮らしたいってのが夢かなあ。」
「菅原先輩、堅実ですね…世の女子が聞いたら泣いて喜びますよ。」
「はは、俺は別に及川みたいにたくさんの女の子にキャーキャー言われたいわけじゃないから。そういう柄でもないしさ。」
そう言って先輩は立ち上がり、ベッドに腰掛けた私の隣に座った。
優しく髪を撫でられる。
「菜月にだけ、好きだって思ってもらえたらほんとそれだけで十分。怖いくらい幸せになれるよ。」
近づいた距離と菅原先輩の本音に、心臓が反応する。
前回部屋に来た時の告白とキスのことを思い出して体が固まった。
そんな私の様子に気付いたのか、先輩は背中をさすってくれる。
「そんな固くなるなよ。大丈夫、今日は何もしないって。」
「は…はい」
「何か今日は将来の話ばっかしてるな。」
「そうですね。何か遠い未来の事って感じで…」
「そうでもないと思うよ。」
「え?」