第4章 変化
その後も、頑張って自分が思うままに練習風景を撮り続けた。
休憩に入ったところで、大地さんが状況を確認しに来てくれる。
「どう?うまくいってるか?」
「いや…どうでしょう、私こういうの苦手なんで…。」
「どれ、ちょっと見せてみ。」
そう言われたのでビデオカメラを大地さんに手渡した。
映像を少し確認したと思ったら、大地さんは笑いをこらえきれないと言った様子でその顔を上げた。
「…菜月、お前、壊滅的にへたくそだな。」
「うう…だから嫌だったのに…」
「どれ、ちょっと俺が撮ってみるか。」
「え、でも練習…」
「大丈夫だよ、ちょっとだけだし。」
そう言って大地さんは再開した練習風景をビデオカメラに収め始めた。
その姿は、さながら子供の運動会での出番を記録しようとする父親のようだった。
「ほら、こんな感じでいいんじゃないか。」
大地さんに返されたビデオカメラの映像を確認すると、そこにはいつもの練習風景がとても綺麗に収められていた。
「すごーい…全然手ブレしてないし、フレームアウトもない…」
「いや、普通あんまりしないもんだと思うけどなあ。」
そう言って苦笑する大地さんに、私は頭を下げた。
「ごめんなさい、私の仕事なのにやってもらっちゃって…」
「気にすんな。何かお前見てると放っとけないっていうか…世話焼いてやりたくなっちゃうんだよ。」