第4章 変化
いつも冷静で、感情の起伏に乏しい月島くんが見せた意外な表情に、私は驚いていた。
そして、密着した体に、心臓が反応する。
「つ、月島くん…こんなとこ誰かに見られたらまた噂が…」
私は月島くんの胸を押して離れようと試みる。
でも、月島くんの腕がそれを許さない。
「だめ。まだ離さない。」
「えっ…」
「僕との噂たつの、迷惑?」
「いや、迷惑とかそういうことは…ないけど」
「じゃあいいでしょ。まだ気がすまない。」
いつもとのギャップが凄まじくて、目の前の人は本当に月島くんなのか、とすら思えてくる。
影山くんとのあんな状態を見られた時には、またからかわれるのだろうと思っていた。
初めて、月島くんという人の核の部分に触れた気がした。
「また、女子に何かされそうになったら僕に言って。何とかするから。」
「あ…ありがと…」
「あと、影山にあんまり気を許さないほうがいいよ。」
「え…」
私を抱きしめたまま、月島くんは続ける。
「絶対に、影山にだけは渡したくない。」
月島くん、何でそんなこと言うの。
それじゃあまるで…
「いや、違うな…菜月のことは、誰にも渡したくない。」
月島くんの腕が緩む気配があった。
でも、私は月島くんの言葉に動揺していて微動だにできなかった。
体が離れる瞬間、表情は見せないままで月島くんは呟いた。
「僕のこと、絶対に好きにさせてみせるから覚悟してなよ。」