第4章 変化
「ちょ、ちょっと菜月!あれ…」
友達が指し示す方向に目をやれば、教室の出入り口付近に立つ月島くんの姿があった。
な、なんでこのタイミングで…
「ど、どうしたの?」
出入り口の付近まで駆け寄って月島くんに声をかける。
「これ、朝練の時に渡し忘れたから。」
月島くんが差し出してきたのは、未だやり取りの続くCD-ROMのケースだった。
「あ、ありがとう!今回も楽しみ!」
そう言うと、月島くんは少し笑ってくれた。
音楽の話題になると月島くんは当たりが柔らかくなる気がする。
「…今度さ、このグループ来日公演があるんだよね。」
「え、そうなの?」
「一緒に、行ってみる?」
あまりライブなどに足を運んだことのない私は、その様子を想像しただけで心が踊った。
何より、あの月島くんからのお誘いだ。
断ったらもう次は二度と無いような気がしていた。
だからつい、二つ返事をしてしまう。
「行ってみたい!!」
「そう。じゃあ、その方向で用意しとく。」
それじゃ、と言って月島くんは自分のクラスに戻っていった。
月島くんが行ってしまってから気付く。
さっき4組の前を通りづらくなるとか考えていたばかりなのに、今度は二人で出かける約束をしてしまった。
「月島くんが笑ったとこ初めて見たかも…」
いつの間にか隣に来ていた友達が、そう呟く。
「影山くんもそうだけど、普段あまり笑わない人にああいう顔させられるなんてすごいね、菜月。」
「ええ、そんな…」
そんなふうに言われると照れてしまう。
「でも気を付けてね。月島くんのファンの子達、多分何かしらしてくるんじゃないかな。」