第4章 変化
菅原先輩に笑顔を向けられて動揺してしまう。
「え?えっと…」
菅原先輩、どういうつもりなんだろ…
「おい、どっちなんだよ!」
私の胸ぐらを今にも掴みそうな勢いの影山くんに凄まれる。
本当は付き合っていないのだから否定すべきなのだろうけど、菅原先輩の意図がわからないからそうしても良いのか判断に困った。
だからといって、肯定するのも嘘になるし…。
影山くんに返事ができないままいると、今度は物凄い勢いで肩を揺り動かされて目が回りそうになる。
「…なんでまだそんな芝居続けるんですか、菅原さん。」
月島くんの静かな声に、影山くんの手が止まる。
「…そっか、やっぱ月島は影山とは違うなあ。簡単に騙されてくれないな。」
「菅原さん!な、なんすかそれ!」
「悪い悪い。何かもうちょい彼氏面したくなっちゃっただけ。」
先輩の言葉に、影山くんと私は肩の力が抜けてしまった。
「でも今回のことで思ったよ。やっぱり菜月のことを守るのは俺でありたい。」
「えっ…」
「…菅原さんて、結構そういうセリフ恥ずかしげもなく言える人なんですね。」
「…はは、自分でもそこはびっくりしてる。でもさ、月島。言いたいことはやっぱりちゃんと言葉にしないと伝わらないよ。」
「…!」
「俺は正々堂々と戦って、最後に菜月に俺を選んで欲しいと思ってる。だからさ、月島ももう少し自分に素直になってみたらどうかな。」
「僕は別に…。」
そう言って顔を伏せる月島くんを見て優しく笑ったあと、菅原先輩は言う。
「…ま、敵に塩を送るのはこれくらいにしておいて。ほら、片付けんぞー!」
私は、その言葉にハッとして片付けの続きにとりかかる。
前を行く菅原先輩の後ろ姿に、堂々とした男らしさみたいなものを感じながら。