第4章 変化
それにしても彼、中学のときはバレーなんてやっていなかったのに何で…。
そう思って隣のコートを盗み見ていると、いきなり首根っこを掴まれて無理矢理振り向かされた。
「おい、よそ見してんじゃねえよ!」
「か、影山くん…」
「相手チームに何かあんのかよ。」
「う、ううん何もない!」
影山くんに本当のことを言うと、何だかとんでもないことになりそうな気がしたので、咄嗟に嘘をついてしまった。
「菜月、お前…」
「え」
「俺に嘘つけるとでも思ってんのか…?」
結局、影山くんの黒いオーラへの恐怖に負け、私は本当のことを話した。
その途端、影山くんは物凄い形相で相手チームのコートの方へ歩き出そうとする。
「や、やめて!まだ本当のことわかんないんだから…!」
勢い付いた彼を止めるのに、手を引くだけでは不十分だったので、私は思わず影山くんの背中に抱きついてしまった。
即座に赤い顔をした影山くんが振り返る。
「ごめん…だから影山くんに言いたくなかったんだよ。」
「…いや、俺も悪い。頭に血上った。」
そう言って影山くんはもう一度相手チームのコートに視線を送る。
「まずはぶっ倒す。話はそれからだ!」
その「話」とやらを影山くんが冷静に出来る保証はどこにもなく、私は早くも試合が終わった時のことが心配になるのだった。