第4章 変化
「こんにちはー…」
エプロン姿の烏養さんがタバコを咥え、漫画雑誌に視線を落としていた顔を上げた。
「おう水沢。お前が昼に来るのは珍しいな。」
いつも見慣れた烏養さんの顔を見て、何だかひどく安心した。
「烏養さーん…」
「な、なんだよ。何かあったのか?」
「調理実習の食材忘れちゃって…」
「…何だよそんなことか。」
「そんなことじゃないですよ!物凄く重要なことです!」
「ほら、何忘れたんだ?出してやるよ。」
烏養さんに食材を用意してもらい、代金を払ってようやく落ち着いた。
「はあ…良かった。」
「早く戻んねえと飯食う時間ないんじゃねえのか?お前食うの遅いんだろ。合宿んとき、皆言ってたぞ。」
「あ、はい…。これ、ありがとうございました。」
「おう。」
安心したらお腹が空いてきた。
烏養さんにお礼を言って坂ノ下商店を出る。
友達の自転車を押して坂を登ろうとしたところで、はたと気付いた。
あれ、ブレザー………
「あ!!!!」
前カゴに確かにひっかけたはずのブレザーが忽然と消えていた。
坂道のどこかで落としたかな…
全然気が付かなかった。
どうしよう、探さなきゃ。