第4章 変化
「お母さん、菅原くんに会いたい…」
リビングでソファに腰を落ち着けたお母さんは、開口一番にそんなことを言う。
「なんでお母さんが菅原先輩に会わなきゃいけないのよ…」
「だってあの子しっかりしてるし…菜月の彼氏にぴったりだなって気に入っちゃったんだもん。」
「お、お母さんが気に入ったって仕方ないでしょ!」
「菜月は、さっき送ってきてくれた子が好きなの?」
そう聞かれて、言葉に詰まる。
「ごめんごめん、あんまりうるさく聞くのは良くないよね。でもさ、お母さん菜月に相談があるんだけど…」
「何?」
「おじいちゃんの家が次の日曜に引っ越しなの、覚えてるわよね。」
「うん。」
母方の祖父母の家、つまりお母さんの実家は隣県にあったのだけれど、祖父母が段々と高齢になり、何かあった時のためにと、この家の近くに引っ越してくることになったのだ。
その引っ越しが今度の日曜にある。
私も手伝いに行くことになっていた。
「それがさあ、お父さんがどうしても抜けられない仕事ができちゃって手伝えなくなっちゃったの。」
「ええ!!そんな!じゃあお母さんと私だけ?!」
「うん…だからさあ…」
お母さんがちらりとこちらを窺う様子で、言いたいことに大体の察しがついた。
「菅原先輩を呼んで欲しいって?」
「おお、すごい!やっぱ親子ね!言いたいことが分かっちゃうなんてー!」
私もよく分かりやすいと言われるけど、それは絶対にお母さんの影響だと思う。
「男手が足りないのよ!ね、お願い。頼んでみてくれない?」
何だかんだ言っても私は、お母さんの頼みに弱い。
「うーん…頼むだけだよ。本当に来てくれるかは知らないよ?」
「やった!お願いね!!」
お母さんは、あからさまに目を輝かせてキッチンへ向かい、私の夕食を温め始めた。
私はそんなお母さんを尻目に、明日なんて先輩に切りだそうかなあと考え、悶々とするのだった。