第4章 変化
3個の大切な大切なドーナツはあっという間に私の胃袋へと消えてなくなってしまった。
「普通の飯は食うのすげえ遅いくせに、甘いもんだとはやいんだな、お前…」
「あー、よく言われるかも。アイスとかもはやいよ。なんでだろうね。」
二人で他愛もないことを話しながら、席を立った。
「ほんとごちそうさまでした。幸せだった〜ありがとう。」
「ああ。じゃあ、行くぞ。」
そう言って、影山くんは駅の方へと足を向けた。
その時だった。
「………?」
どこかから誰かの視線を感じたような気がして、辺りを見回す。
でも、もう暗いし、視線の正体はつかめなかった。
そもそも本当に見られていたのかもわからない。
立ち止まって辺りを見回していた私に気付いたのか、影山くんが声をかけてくる。
「どうしたんだよ。」
「ん、何か今誰かに見られてたような気がしたんだけど…気のせいだね。」
「は?まじかよ。」
影山くんも辺りを見回してくれたけど、やはり怪しい人は見当たらないようだ。
「ごめんごめん、忘れて!じゃあまた明日ね。」
「おい待てって。もともとそのつもりだったけど、家の近くまで送ってく。」
「え、大丈夫だよ。」
「変な視線感じたとか言ってるのに放って帰れるかよ。行くぞ。」
そう言って、影山くんはどんどん先を歩いて駅に入り、改札を抜け、私の最寄り駅の方面の電車に乗り込んでしまう。
私は、そんな影山くんを焦って追いかけ、結局本当に家の近くまで送ってもらってしまった。