第4章 変化
その後、時間をかけて苦渋の決断をし、結局3個にしぼった。
「帰ったら夕食もあるしね。」
そう言ったら、
「女子が夕飯前にドーナツ3個は明らかに食い過ぎだろ」
と突っ込まれた。
これでもしぼったのに…。
「ねえ、影山くんは食べないの?」
「…んじゃ、普通のやつ。」
そう言われたので一番普通そうなドーナツをトレーに乗せた。
私が一人で食べることになるから、気にしてくれたのかな?
「影山くんは甘いの嫌い?」
「別に嫌いじゃねえけど、こういうとこに自分から来ることはねえな。」
「まあ、そうだよね…男の子はあんまり一人では来ないだろうね。」
会計を済ませてもらい、二人で席についた。
「それじゃあ、ありがたくいただきます…!」
「ああ。」
ひとつめのドーナツに齧り付くと、一気に口の中に甘さが広がって幸せを感じる。
「ああ…糖分がしみわたる…幸せ…」
「間抜け面すんなよ。」
「私、そんな変な顔してるの?食べてる時に鏡なんて見たことないからわかんない。」
そう言うと、影山くんは表情を少し柔らかくした。
「ああ、してる。」
「ひどいなあ…」
「…でも、俺は菜月が間抜け面で幸せそうに食ってるの見るのが好きだけどな。」
「え…」
影山くんの言葉に、ドーナツを口に運ぶ手が止まる。
「な、なんかそう言われると影山くんの前で食べるの照れるね…」
「い、いいから黙って食えよ!」
自分が恥ずかしいことを言ったと自覚したのか、影山くんはまた怒鳴る。
また怒られそうだけど、私はついニヤニヤしてしまう。
だって影山くんおもしろいんだもん。