第1章 出会い
その後は清水先輩に色々教えてもらい、少しずつ練習の手伝いなどを行った。
さっき影山くんが言っていたボール出しもやってみることができた。
練習が終わると、片付け。
朝練の時間は短く、終了のチャイムが鳴ったなら手っ取り早く片付けなければホームルームに間に合わない。
個人的に挨拶できていない月島くんと山口くんに声をかけたかったけれど、相手に迷惑をかけてもいけないので放課後の練習の時にすることにする。
「急ごう 菜月!ホームルーム始まっちゃう! 」
「あ、うん!」
部員の中で唯一同じクラスの日向くんが声をかけに来てくれた。
呼び方はしっかり下の名前になっていた。
なんだかくすぐったいけれど、こうやって呼び方を変えたり、たくさん話してお互いのことを知ったりしてだんだん距離が縮まっていくものなんだろうなあとしみじみ思う。
日向くんの後に続いて体育館を出ると、ふいに振り返った日向くんが苦い表情を浮かべた。
「げっ影山…なんでお前も一緒に来るんだよ」
「何でも何も同じ階に教室があるんだ、仕方ねーだろ!!」
二人はどうやら出会いに何か問題があったらしく、まだお互いのことを良くは思っていないようだけれど、やりとりを見ていると何だかとてもいいコンビに見えてくる。
本人達は、絶対否定するだろうけど。
一年の教室が見えてくる。
「影山くんは3組だっけ?また後でね!」
「ああ。」
やっぱり先程の名前呼びの件から影山くんの態度が柔らかくなった気がする。
「菜月すげーなー。もう影山と打ち解けてんじゃん。」
「日向くんほどじゃないよ。」
「ええ?!」
驚く日向君の声を背中に受けて、先に教室に入る。
昨日とは打って変わって晴れ晴れした気持ちで自分の席についた。
バレー部に入部したことで、何だか高校生活楽しくなりそう…!
嬉しいな。
後から隣の席に腰を降ろした日向くんが、にやにやしている私を見て不思議そうな顔をしていた。