第4章 変化
「おうお疲れ!」
そこには、私の心の師匠となった西谷先輩がいた。
「西谷先輩!!」
「な、なんだよ。嬉しそうな顔しやがって…可愛いやつめ!!」
「へへ…。何か西谷先輩といるとすごく元気が出るんで。」
「そうか?俺の元気ならいくらでも分けてやるよ。有り余ってるからな!」
西谷先輩はそう言って私の背中をバシッと叩く。
私が軽く咳きこむと、悪りー悪りーと言って、また二人で笑い合った。
「テストが終わった解放感が半端ないですね…」
「ああ、やっと体育館で練習できるぜ。」
そう話していると、ふと見上げた天井に、私は黒いものを見つけてしまう。
思わず、一瞬息が止まった。
「に、西谷先輩…」
「ん、どーした?」
私はふとした時によく部屋の隅の虫などを見つけてしまう目を持っていた。
気付かないほうが幸せなのに、何故かそういうものにすごく目ざとい。
西谷先輩に教えるのに、虫の名前すら口に出したくなくて、私は黙って天井を指差した。
「あ、ゴ」
「言わないでください!!!」
虫の名前を言おうとした西谷先輩を必死で遮る。
「よし。この俺が退治してくれよう。なんたって俺はお前のヒーローだからな!!」
この前のヒーロー呼びがいたく気に入ったらしい先輩は、自らそのことを話題に出して部室の隅にあった殺虫スプレーを構えた。
「そんなの置いてあるんですね!」
「ああ、ここよく出るからな。」
「ええええ」