第4章 変化
西谷先輩に誘われて、帰り道を共にすることになった。
そして私は今、何故か西谷先輩にアイスをごちそうになっている。
私が助けてもらったのだから、本来私がごちそうすべきなんじゃないのか。
そう思って申し出たけど、細かいこと気にすんな、と一蹴されてしまった。
「さっきは本当にひやっとしました…ちょっとぼーっとしてて。」
「お前は基本的にぼーっとしてる気がするけどな。」
そう言って笑う西谷先輩の言葉が心にぐさりと刺さる。
「なんか考え事でもしてたのか?」
「あー…はい。最近色々と悩みが…。」
「ふーん…。何か大変そうだな。」
「西谷先輩は最近悩みとか、ないんですか?」
そう問うと、西谷先輩はニッと笑って自分を親指でぐっと指差した。
「俺には悩みや後悔というものが基本的にない!何故なら、細かいことを考えないからだ!」
「おおー…!」
「よく、あの時ああしてればとか、過去に戻れたらとか言うやついるだろ。」
私は、西谷先輩の話に完全に聞き入っていた。
何度も相槌を打つ。
「俺、そういうの全然わかんねえ。そういうこと言うやつはどうせ元に戻れたとしたって、イジイジグジグジして同じこと繰り返すに決まってんだ。」
「……!」
「俺は自分を信じてるから、過去の自分の行動は、必ず必要なものだったと思える。よって、後悔は生まれない。もちろん反省はたまにあるけどな。」
どうだ、シンプルだろ!
そう言って腰に両手を当てて笑う西谷先輩は、輝いて見えた。
「お前が何に悩んでるのかは知らねえけど、俺みたいに考えるのが難しければ一度頭の外に追い出すしかねえんじゃねえの。」
「追い出す…」
「そ。ほら、行くぞ!」