第4章 変化
「西谷先輩…!」
「おう菜月!ナイスキャッチだったろ!今持ってってやるからな!!」
「え、いや、私が取りに…」
そう言おうとした時には、もう既に西谷先輩はいなくなっていた。
印象的な黒は、西谷先輩の学ランだったようだ。
西谷先輩は高校の選択基準が近さと制服だったらしい。
黒の学ランに憧れていたというだけあって、それは西谷先輩にとても良く似合っていた。
ベランダから教室内へ戻ったところで、西谷先輩が教室の出入口から顔を出した。
「西谷先輩!ありがとうございました…本当に助かりました…」
「風強かったもんな。でも気をつけろよ、あぶねーから。」
そう言って、私に黒板消しを手渡してくれる。
「西谷先輩、ヒーローみたいでした…!すごかったです。」
「ヒ、ヒーロー?!!」
何故か、目の前の西谷先輩は驚いたように固まっている。
その直後に俯いて震えだした。
そして再び顔を上げたとき、彼の瞳はキラキラに輝いていた。
「ヒーロー…なんて良い響きだ…。おい、もう掃除当番終わるだろ。」
「あ、はい。」
「じゃあ今日は俺と帰ろうぜ!たまにはいいだろ。」